2007年04月28日

国立能楽堂 蝋燭能 「 西行桜 」

4月26日夜
国立能楽堂 にて 蝋燭能 「 西行桜 」 を 鑑賞しました。
能楽堂内の 照明を すべて落とし、蝋燭 を 30本 立てます。
液晶画面の 字幕 も 使いません。
開演後は、途中入場 できません。( 通常は OKです )

CIMG0847.JPG
休憩時間の様子


 ◆狂言 真奪 ( しんばい ) 和泉流
 ◆能 西行桜 ( さいぎょうざくら ) 金春流

『 狂言 真奪 』
いけばなの 一種、立花 に 使う 真 ( 中心となる 枝 ) を 探しに出た 主人と太郎冠者 は、見事な真 を 持つ男 に 出会います。

主人が あれを 欲しいと 言い出したので、太郎冠者が 奪い取ります。
もみ合いを しているうちに 主人の 大事な 刀 を 逆に とられてしまいます・・・。

刀を 奪い返すために、男の 後ろから 羽交い絞めにした 主人が、早く 縄を 打て と いうと、もたもたとした 太郎冠者が あやまって 主人に 縄を 打ってしまい、男は さっさと逃れて 立ち去ってしまいます。

とても 短い 狂言。
泥棒 ( 本当は 泥棒 ではないですね。先に 自分たちが 勝手に 男の 真を 奪ったのですから。 ) を 捕らえて あせる 主人と ゆっくりと 縄を 綯っていく 太郎冠者の 対比 が 面白いところです。

「 泥棒を 捕らえて 縄を 綯う ( なう ) 」 という ことわざ が ありますが、まさに それを 舞台上で 実際に 行う 狂言です。



『 能 西行桜 』
あまりの うつくしさゆえに、花見客 の 喧騒 を 招く 桜の花。
西行法師が 桜の咎 を 責める 和歌 を 詠むと、年老いた 桜の精 が 抗議に 現れます。

京都の 名所の桜 を 語って その景色の 美しさを 讃え、
「 春宵一刻値千金、花に 清香 月に 影 」
と 移ろう時 の はかなさを、さびさびとした 舞 で舞い、やがて 夜明け とともに 姿を 消します。


蝋燭の 薄明かりの 中、シテ も ワキ も 薄い チョコレート色 を基調に オレンジ色を 混ぜたような ( なんとも へんな 形容ですが、なんという お色目 かしら? ) とっても 美しい 装束 です。

その 落ち着いた 色から、老桜の精 と 西行 の、どちらも 若くはない 渋み と 華やぎ を 併せ持った 「 枯淡 の 美 」 と いう感じが うかがいしれます。

京都の 名所の 桜を 連ねて 謡い、短い春 の 季節の 移ろいを 哀しみ、とどまることを 知らない 時 への 哀惜 と 惜春 の 念 を かかえて 静かに 静かに 舞います。

夜桜の 花見客も いなくなり、夜が 明けるまでの 時間を 惜しむかのような、老桜の精 の 序の舞い。

まるで、明け方に、桜の木を 独り占めにして 木の下 から 風に そよぐ 満天の星 ならぬ 満天の桜 を 愛でているかのような、そんな 錯覚さえ 覚えてしまいます。

・・・蝋燭 だけがたより の 舞台 は、幽玄の美 の 世界 に 私たちを 運んでくれました。



今回は、蝋燭の 薄明かりの 中、「 詞章 」 を 見ることも 「 字幕 」 を 見ることもで きなかったので、帰宅後、じっくりと 読んでみました。



この作品に 登場する 京都の 花の 名所。


・近衛殿 の 糸桜   ⇒ 京都御苑 「 近衛邸跡 の 糸桜 」
・千本 ( ちもと ) の 桜 ⇒ 大報恩寺 千本釈迦堂
・毘沙門堂 ⇒ 樹齢150年 の しだれ桜 で 有名な 山科区 の 毘沙門堂 
・黒谷 ⇒ 黒谷 金戒光明寺
・下河原 ⇒ 八坂神社?
・華頂山 ⇒ 知恩院
・鷲のお山 ⇒ 双林寺
・音羽山 ⇒ 清水寺
・嵐山 ⇒ 戸無瀬の滝



そして、この作品の 舞台 となったのが、西京区大原野 にある 勝持寺 ( しょうじじ )

勝持寺は 「 花の寺 」 とも 呼ばれ、今も 西行桜が あります。

本当に 京都は、桜の 名所揃い ですね。

桜で 有名な お寺 の オンパレード です。

今、桜 というと 多くの人が 群がるかのような 「 お花見 」 が 普通ですが、その昔、 まだ ソメイヨシノ が 全国的に 広まる前の 桜 といえば、山桜 が 中心であり、昔の 花見 というものは、原則 「 一本 花見 」 だったそうです。

そして、「 花見 」 は また  「 桜狩 」 と いう 言葉でも あらわされ、 山桜を 探し求めて 山を 越え、川を 渡りして、初めて 「 桜を 愛でる チャンス 」 が 得られるものだったそうです。

西行は  「 花見んと 群れつつ人の 来るのみぞ あたら桜の 咎にありける 」

と 「 桜の美しさ 」 の せい にしますが、これも ひとえに、 なぜか 桜に 惹かれる 日本人 の DNA の なせる業 なのでしょうか。

実際には、桜の咎 と 思う人は いるはずもなく、とにかく 「 美しい 」 と 感じる。

「 桜 の 命 の 短さ 」 ゆえ、その 美しさに よけいに 惹かれるのは、日本人の 独特な 感性なのか、 世界中の 人も 同じように 感じるものなのでしょうか。

西行の時代 から 千年近くを 経た 今も やはり、変わらぬ 風景、変わらぬ 感性 が 続いています。

CIMG0850.JPG
終演後の様子


藤 の 季節 なので、本日の 着物は
うす紫 の 紬 と 龍村 の 光波帯 で。


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posted by ふじりんご at 16:24| Comment(14) | TrackBack(1) | 日本の美 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
西行桜 私も拝見したくなりました。
下河原は、八坂神社の正門=南門を出た一帯で、中世にはこちらのほうに門前町が出来てにぎわってました。(いまは西の楼門を出た祇園のほうがにぎわってますが)
お着物でお出かけはいいですね。もっと着物が欲しくなりました。(笑)
Posted by もちや at 2007年04月29日 06:23
〜もちやさんへ〜

もちやさん、おはようございます!
「西行桜」の中で、下河原と書いてある部分は、やはり八坂神社のことでしょうかね?
もちやさんがブログ内で紹介してくださっていた糸桜も出てきましたよ。
こういう美しい内容のお能鑑賞には、着物はぴったりですよね。
私も年齢に合った着物がほとんどなかったのですが、お茶の先生をしている母が関西から関東に引っ越してきましたので、少しずつ譲ってもらったりして増えてまいりました。
もちやさんも、ぼちぼちお誂え下さいませ。(笑)
Posted by ふじりんご at 2007年04月29日 10:48
あら!お着物のお色が素敵!!
Posted by くるみりす at 2007年04月29日 21:56
〜くるみりすさんへ〜

くるみりすさん、こんばんは!
ありがとうございます。
藤の季節なので、うす紫色にしました〜。
一緒に行った友人は、淡いピンク色の色無地。
どちらも「西行桜」という題目のお能鑑賞にはピッタリでしょ!(笑)

Posted by ふじりんご at 2007年04月30日 00:00
着物姿で能鑑賞。。。優雅ですねー。。。
シンプルな着物と帯。。。いい感じです。

この3日間は家計簿の整理とお祝い返しの準備と挨拶まわり・仕事・花壇の手入れと掃除。。これで終わりです。

温泉でも行ってのんびりしたーいです。。。



Posted by このは at 2007年05月01日 00:13
〜このはさんへ〜

このはさん、おはようございます。
とってもお忙しい連休のようですね。
長い人生ですもの、多忙の時期もあればヒマな時期もあります。
わたしは、今ヒマという訳ではありませんが、生活のリズムはかなり一定していますので、アクセクはしていないかなあー。
キャリアウーマンのこのはさんはもうしばらく、多忙な日々の健康管理にお気をつけてお過ごしくださいませネ。
温泉だったら、私も行きたいなあー。
Posted by ふじりんご at 2007年05月01日 10:34
まあ、こんな置物を着て、お能を見に行きたいですねえ。
こんな演出もあるんですね。
薪能は、何度か見たことはありますが、ろうそうくの揺らめきの中は、また一層幻想的な感じになるのでしょうね。
Posted by ゆみたん at 2007年05月01日 11:36
〜ゆみたんさんへ〜

ゆみたんさん、こんばんは。
蝋燭能、私もはじめて観ましたの。
能楽堂の中で、蝋燭をどのように使うのか、どんな大きさの蝋燭なのか、など興味津々だったのです。
そうしたら、能舞台前に写真のような蝋燭を30本立てて、という演出でした。
このほかにも能楽堂によっては、また演目によっても違った演出があるのかもしれませんね。
なんともいえない幻想的な、おぼろ月夜的な観能となりましたよ〜。
Posted by ふじりんご at 2007年05月01日 23:46
お久しぶりです。やっとコメントさせていただきま〜す!

きれいな色のお着物ですね。私はあいにくと蝋燭能にはいけませんでした。

27日に観世能楽堂にオランダから来日したご夫妻とドイツからいらしたインド人、
通訳の友人たち総勢7人で行ってきました。このことはいつかブログに書こうと思っています。
またよろしくお願いいたしますね。
Posted by つきのこ at 2007年05月02日 01:16
ごぶさたしてしまって・・・
先日葉山のほうへ行ったら、ふじりんごさんのお着物の色と同じ藤の花が山々に咲いていました。
いいお舞台だったようですね・・ウラメシですー。和泉流は石田さんだったのかな。
で、アイは万作師だったのですね。すごい!京都の花名所もありがとうございました。なるほどーです。
Posted by fuku(ginsuisen) at 2007年05月02日 08:36
〜つきのこさんへ〜

つきのこさん〜ん、お久し振りで〜す。
(どこか遠いところに向かって言っておりまする)
PCそろそろ修理から戻ってくる頃でしょうか。
もう5月ですものね。もうすぐまた夜更かしになりますね。(笑)

結局、観世能楽堂にいらしたのですか。
渋谷も近く、新旧の日本の姿を一挙にお楽しみになれたかもしれませんね。

ここまで書いて、洗濯物を干しに行ったらはたと気づきましたが、もしかしてつきのこさんのPCもう戻ってきたということでしょうか?
それだったら、もう夜更かしは始まっているとか?


Posted by ふじりんご at 2007年05月02日 10:24
〜fuku(ginsuisen) さんへ〜

fukuさん、おはようございます。
葉山に行かれたのですか。
いいなあー。
わたしは連休明けにすぐ法事がありますので、連休中の遠出はなしなのです。
あ〜〜ぁ、ですわ・・・。

わたしも先日、東名の世田谷あたりだと思うのですが、路肩の山肌一面に藤の花を見てびっくりしました。
藤の花って垂れているイメージばかりありましたので、山肌につたがからまってお花が咲く風景は初めてでしたので。

「真奪」は石田さんでしたよ。
いいお声だし、メリハリが合って、楽しめました。
アイの万作師は、狂言で拝見する時と雰囲気が違って、せりふはかなりあるのですが目立たず、静かに去っていかれました。
Posted by ふじりんご at 2007年05月02日 10:39
私は能をまともに観た事がまだないです。
神楽は大好きで、何度も観てるんですけどね♪
神楽も子どもの頃は、話の流れとか分からなかったけど、
大人になって回数を重ねるうちに話を覚えてきて
楽しみが倍増しました。
能も中身が分かれば、楽しく見られるんでしょうね。
Posted by lunaはち子 at 2007年05月02日 21:47
〜lunaはち子さんへ〜

はち子さん、こんにちは!
はち子さんは、宮島のこども神楽などに親しんでいらっしゃるのですね。
わたしははち子さんとは反対に
”神楽をまともに観た事がまだないです”よ〜。
神楽は中身が分かれば楽しく観られるのですね。
能は中身の概容がわかっても、言い回しが古文のためよくわからなかったり、面をかぶっての発声は聞き取りにくかったりで、あいかわらず、眠くなる時も多々ありまする。(笑)
それでもやはり回数を重ねるうちにもっと楽しく観られるようになるだろうと、よいように考えて、毎回着物で行くことを楽しんでおりますわ。(笑)
Posted by ふじりんご at 2007年05月03日 13:30
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