2007年08月06日

幽玄 の 美 ―八ヶ岳薪能

八ヶ岳薪能 を 堪能 して まいりました。

山梨県 北杜市 小淵沢町 に ある 身曾岐神社 ( みそぎじんじゃ ) で、
毎年、例大祭前夜 の 8月3日、 宵宮 の 神事 として 行われるものです。

去年 も チケット を 求めながら、完売 の ため 行けませんでしたので、
「 今年 こそは! 」 
と、思い入れ も いっそう 大きく、楽しみ に して おりました。

蓼科 で 用事 が あったため、会場入り は ぎりぎり の 4時15分。

まだ 夕暮れ とは いえない 日差し の 中、
砂利 を 踏みしめ 踏みしめ、進みます。
まわり の 大木 からは、 ヒグラシ の 大合唱。

座席 は、中央真正面!  ラッキー!
しかし、特設席 の 一番 後ろ でしたー。
これでは、舞台 の 演者 の 顔 を 見分けること は 出来ない。

と 思うと、ちょっと 残念 でしたが、
でも、会場全体 を 一番 高いところ から、すべて 見渡すこと が 出来ます。

野外 だし、舞台前 には 池 が あるし、ヒグラシ は 大合唱 だし・・・。
それでは、舞台 が 遠い 分、薪能 の 全体 の 雰囲気 を 楽しむこと に 致しましょう。

 CIMG1175.JPG   CIMG1176.JPG 


おごそかな 清祓 の 儀、大学 の 教授先生 の 解説 に 続いて

  ・能 『 清経 』 塩津哲生 宝生欣哉  他

  ・狂言 『 呼声 』 山本東次郎 山本則直 山本則俊

  ・能 『 船弁慶 』 友枝昭世 友枝雄太郎 宝生欣哉  他 


◆ 『 清経 』
の 時 は、まだ 夕暮れ に 遠く、
ヒグラシ も 舞台 の 囃子 と 一体 と なって、声高く 鳴き続けて います。

今回、薪能 二回目 の 経験 でしたが、
マイク を 通して 響く 言葉 に、前回 の ような 違和感 は 感じません。

1000人 ほど の 観客 が、能舞台 の 前 の 池 を はさんで、
特設席、芝生席、岩の上席 など に 座っていますので、
マイク の 音量 が なければ、聞き取れる はずもなく、

むしろ、清経( シテ ) と 妻( ツレ ) の 恨み の こもった 言葉 の やり取り は、
聞き取りやすくて ありがたかった です。


◆ 『 呼声 』 
は、山本三兄弟 に よる 緊密 な チームプレー。

「 平家節 」 「 小唄節 」 「 踊節 」 と、
次々 に さまざまな 節回し を つけて、呼びかけ と 返答 を する、
歌合戦 の 様相 です。

太郎冠者 山本東次郎さん の お声 は、とても いいですね。
それほど 力まず に、張り の ある お声 を 出して いらっしゃる。

小唄節 の 節回し など、う〜〜ん、お見事! と うなるほど です。

そして、返答 の たび に 出ていらっしゃる 立ち位置 と いうのでしょうか、
演じ位置 が、毎回、ぴたり と 同じ 場所 なのは さすがで すね。

中央真正面 の 一番 高い 座席 だから こそ、
普段 気づかない で 見過ごしていた 点 も、はっきり と 見えてくる 感じ です。


このあと、太陽 が 沈んだ 頃、
神職、巫女さんたち が、しずしず と 入場 してきて
かがり火 に 点火 します。
CIMG1181.JPG

薪 に 火 が 入ると、ぱちぱち と はぜて、薪 の 香り が ただよい、
灰 が 風 と 共 に 空 を 舞います。
CIMG1180.JPG

薪能 を 魅力的 だと 思える 瞬間 でしょうか。


我々 の 席 から ほんの 1メートルほど 左横 の 場所上部 から、 ライトアップ も 始まりました。
だんだんと 夕闇 が 迫ってきて、池 に 能舞台 が 映りはじめます。

なんという 幻想的 な 雰囲気 でしょう!!


◆ 『 船弁慶 』
は、こんな、幻想的 な 雰囲気 への 移行時間帯 に 始まりました。

ブログ お仲間 の fukuさん つきのこさん 一押し の 演者、 友枝昭世さん の 登場 です。

弁慶 と 静御前 の 橋がかり での やりとり、
一歩一歩 子方 義経 の もとへ 進む 静 の 足取り などは、
観客 の 目 を ひきつけます。

と いうよりも、観客 が、
池 を はさんだ 能舞台上 の 静御前 の 一挙手一投足 に
完全 に 吸い寄せられている と いうべきか。

全体 を 見回すと、緊迫した 空気 さえ 流れている。

白拍子姿 の 静御前 の 舞。 

ああー、これ が 友枝さん の 舞い なのねー。
重力 を 感じさせない、空 に 浮かぶ かのような、軽々とした 舞い。

どん、 と 床 を 踏みしめる 音 も ほとんど しません。
とにかく 軽い。

白拍子 の 静 に なりきって。

「 その 人物 そのもの に 見えてくる。 」
と いう 皆さん の 評 が わかるような 気 が しました。

舞 の 力 が いかに 大きいもの なのか、に 気づかされた 瞬間 です。 


後シテ 登場 前 の、
アイ ( 船頭役 ) の 船 の 漕ぎっぷり と、囃子 の 演奏 から、
嵐 の 中 ( クライマックス ) へと 突入 する 空間 と 時間 を、しっかりと 感じること が 出来ます。

観客 は 否応なく さらに さらに 引き込まれます。

この 時刻、いつのまにか 神社全体 は に 包まれ、
ライトアップ された 舞台 と、舞台うしろ の 大きな カラマツ と、
舞台 を 映す 池 の 水面 だけ が、
くっきり と 浮かび上がってきて・・・。

ライト の 道筋 には、薪 の 煙 が ただよい、
その中 で、灰 と 煤 と 虫 が 静かに 踊って います。

暗闇 の 中、もう ヒグラシ は ほとんど 鳴かず、
風 の 音 と ポツポツ と 降り出した 雨 だけ が、舞台上 の 嵐 を 予感 させています。

なんという 絶妙な、自然 と 舞台 の 調和 でしょう!!

そして、現れる 知盛 の 亡霊 ( 後シテ ) の 荒くれ姿。
友枝さん は、静御前 から 知盛 の 魂 へと のり移り・・・。

突然、亡霊 を 鋭く 斬る かのように 子方 の 凛 とした 高い 声 が !!

「 その時 義経 少しも 騒がずー 」

義経 の 言葉 が 舞台 に 響き 渡る 。
義経 の 剣 と 亡霊 の なぎなた が 激しく ぶつかる。

立ち向かう 弁慶 の、必死 の 祈り と
数珠 を 擦り合わす 仏法 の 音色 ・・・。

知盛 の なぎなた を 持った 舞 ( 攻め ) は、
前シテ と 対照的 に 荒々しい 武将 を 想像 して いましたが、
またしても、友枝さん は 軽々 とした 宙 を 舞うような 動き です。
重力 を 感じさせないのは、亡霊 だから でしょうか。


幽玄の美 」 とは、 このような 瞬間 を 指して 言う 言葉 かも しれません。

別世界 を 見ているのに、別世界 に 入っています。
友枝さん が 演じているのに、知盛 の 亡霊 が そこに います。


『 船弁慶 』 は、演出 も わかりやすく、テンポ も 軽快 で、
日本人 なら 誰でも よく 知っている 内容 ですから、
感情移入 しやすい と いうこと も あり、

それを、
「 一度 は 観て みるべし 」
と 言われていた 友枝さん で 観れた こと。

身曾岐神社 の 能舞台 という、すばらしい 環境 で、
薪能 の 雰囲気 を 体中 で 味わいながら 楽しめたこと。

・・・これは、まさに、

真夏の夜の夢 」  で  ございました〜。

CIMG1184.JPG



posted by ふじりんご at 15:14| Comment(16) | TrackBack(0) | 日本の美 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
また、一人ファンが増えてしまったのでしょうか。すばらしいレポート、見ているようです。雄太郎君の声も聞えてきそうですわー。
友枝マジックにかかりましたね、ふじりんごさんも。
Posted by fuku(ginsuisen) at 2007年08月06日 17:22
こんどは、八ヶ岳薪能ですか!!

すばらしい解説ですね! よくわかります。
そういう催しがあること、どうやって調べるのですか? もっとも、HPを書いていらっしゃるから、それ位はおちゃのこさいさいでしょうけど。
知らない間に、きっとあちこち出没なさるのね(笑)! 
いいものをみる目ができているふじりんごさんだから。。これはどう? って尋ねたらきっとおもしろい解答返ってきますよね(笑)! 
Posted by ここのは at 2007年08月06日 20:22
〜fuku(ginsuisen)さんへ〜

fukuさん、コメントありがとうございます!
fukuさんたちが、どうして厳島神社にまでいらっしゃるのか、 少しわかるような気が致しました!!

友枝マジック。
―本当にそうですね。
友枝さんはマジシャンかー(笑)ってね。

今後、友枝さんばかりを観るという方法はわたくしにはムリですが、少なくとも、今回の舞を「基準」として目に焼き付けておいて、いろいろな人の舞を拝見しようかと。

こうして、少しずつ見る目が出来てくれれば嬉しいのですが・・・。

厳島神社、いつか行ってみま〜す。かならずぅっ!!

Posted by ふじりんご at 2007年08月06日 22:26
〜ここのはさんへ〜

ここのはさん、コメントありがとうございます!

>そういう催しがあること、どうやって調べるのですか?<

だって、今、能楽鑑賞にはまっていますので。(笑)
国立能楽堂などへ行くたびに、いろいろなパンフレットを貰って来ますし・・・。

>いいものをみる目ができているふじりんごさんだから。。<

いえいえ、まだまだです。
↑のfukuさんなど、お能を語ったら天下一品と言う方々がたくさんいらっしゃいます。

むしろ、お茶にしろ、お能にしろ、伝統芸能の奥の深さに圧倒されていますぅー。(汗)

八ヶ岳は、朝夕は涼しいですが、やはり日中は
太陽が近い分? とっても暑かったです!!

ここのはさん地方も、暑さ厳しいでしょうか?
夏バテにお気をつけ下さいませね。

Posted by ふじりんご at 2007年08月06日 22:40
すばらしいレポートですね
勉強になります
Posted by くるみりす at 2007年08月07日 22:27
〜くるみりすさんへ〜

くるみりすさん、おはようございます!
いやいや〜〜、この長ったらしい記事を最後まで読んでくださったのですね!
まあまあ、ありがとうございます!!

書いた本人が、翌日読み返してみて、
「なにこれ!」
「こんなだらだらした長い文章、誰が読むの?」
と、まぁ、文章力のなさに嫌気がさしておりました。 
この暑いのに、ありがとうございました。(笑)

次回からは、もっと簡潔に、もっとわかりやすく、を心がけまする・・・。

Posted by ふじりんご at 2007年08月08日 10:34
明るい写真からだんだん暗くなっていく様子が分かります。
ふじりんごさんの解説を読んでいるとお能の事が全く分からない私でも、そこにいるような気分が少ししてきました。

八ヶ岳の夜は涼しかったでしょうね。
Posted by ベンジャミン at 2007年08月08日 18:41
素晴らしい幽玄の世界の臨場感あふれるレポート、さすがです!!
神秘的な光景が目に浮かぶようです。
家の近くには能楽堂はいろいろありまして、何回か
お能は観た事はありますが、薪能はまだありません。
このブログを読ませていただいて、是非薪能を観たくなりました。
Posted by たかこ at 2007年08月08日 21:34
〜ベンジャミンさんへ〜

ベンジャミンさん、おはようございます!
こんな暑〜い日に、こんな長ったらし〜い文章を読んでくださいまして、ありがとうございます!!
わたしの記事はどれもこれも長〜いですね。
最後まで読んでくださいます皆様に、心から感謝でございます!!

八ヶ岳の夜と朝は涼しいのですが、日中は全然涼しくなくて、避暑には程遠い暑さです。
今年の夏はまた格別のようですね。
夏バテなさいませんよう、お気をつけてお過ごしくださいませね。

Posted by ふじりんご at 2007年08月09日 09:57
〜たかこさんへ〜

たかこさん、おはようございます!
皆さんに申し上げておりますが、長〜い文章を読んでくださり、臨場感まで感じてくださったなんて、感謝感謝でございます。
ありがとうございます!!

薪能、京都でしたらいろいろなところで開催されるでしょうね。
神社の神事の一つとしての開催が多いみたいですね。
普通のお能鑑賞よりは、気楽な雰囲気が味わえるような気も致します。

それにしても、京都の今、あ〜〜、暑いだろうなあ〜〜。
夏バテなさいませんよう、十分お気をつけ下さいませね。
Posted by ふじりんご at 2007年08月09日 10:11
能楽堂など神奈川、野毛にあるほど身近にありながらもまだ一回も観たことないんです。日本人てして観たほうがいいと思うのですが、B’zのライブに行ってしまうだろう。。。
すごい観客動員ですねー。
Posted by ひめっち at 2007年08月09日 10:40
〜ひめっちさんへ〜

ひめっちさん、こんにちは!
確かに、身曾岐神社の観客動員数はすごいものがありました。
でも、能を見たことない日本人って多いですよね。
わたしも数年前までそうでしたもの。
日本文化、特にお茶と能楽に興味を持ち始めたのは、50歳になろうかという手前の頃でした。
だから、ひめっちさんもムリしなくても、ご興味が出始めてからご覧になればいいのでは。

B’z のライブ、いいですねぇ。
娘も大好きですので、わたしも何曲か知っていますよ。
ドライブ中もよく聞きます〜。


Posted by ふじりんご at 2007年08月09日 16:41
こんにちは、毎日暑いですね。
エアコン故障で、扇風機と団扇で暑さをしのいでおりますが、
とてもとてもかないませんわ^^;
八ヶ岳薪能、またもや思い出しましたわ。
雨降らずによかったですね。寒いくらいでした。
案外お近くに座っていたような・・・。
私たちも15分前に到着したんですよ。いろいろ寄り道したもんで。
静御前の舞、美しかったですね。
いつか厳島観月能、ご一緒できるといいですが〜。
Posted by つきのこ at 2007年08月10日 11:46
まさに、日本の伝統美ですね。
ひぐらしの声は、雰囲気を盛り上げてくれますね。

こちらで10月頃の薪能に、行った事があります。紅葉の風情がまたお能に映えていたのを思い出します。
Posted by ゆみたん at 2007年08月11日 16:43
〜つきのこさんへ〜

つきのこさん、留守にしており、お返事遅れました。
エアコン故障とは、またつらいっ!ですね。
八ヶ岳も日中は暑かったですよね。
夕方になってようやく涼しくなったような。
あらぁ、案外お近くにいらしたのでしょうか?
つきのこさんたちが、友枝さんの舞に惹かれるのがなぜか? ようやく少しだけわかったような気がいたしました。
わたしも、いつか厳島へ行けますように、とささやかな希望を持っておりますので。(笑)
それから、また来年も八ヶ岳へは行ってみたいなと思っておりますわ。
つきのこさんも?

Posted by ふじりんご at 2007年08月12日 18:15
〜ゆみたんさんへ〜

ゆみたんさん、留守にしましたのでお返事遅れました。
ヒグラシの鳴き声って、どことなく侘び寂びに通じるような感じですよね。
確かに、雰囲気を盛り上げてくれていましたわ。

紅葉の風情の薪能。
わぁ〜、それもまたステキそうですねぇ。
四季折々の自然の中で薪能を観れたらと思いますね。
夏は、今回、八ヶ岳とはいえ、かなり暑い日でしたが、夕刻になるとさすがに涼しくなりました。
冬の薪能は、ちと寒すぎるでしょうか?


Posted by ふじりんご at 2007年08月12日 18:21
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